米国東海岸に、新型コロナウイルスが与えた影響について ad:tech tokyoやBrand Summitに登壇経験もある、Wet CementのJennifer Willey にインタビューした動画の要約をお届けします。全編を通して繰り返し語られているのが「チームの大切さ」です。こうした時だからこそ、人とのつながり、コミュニケーションの重要性が高まっているようです。
こちらの動画のアーカイブ(約30分)もご覧ください。
1.How is the U.S government supporting the companies?
アメリカ政府の対応、企業へのサポートは? 1:50
- Wet Cementのような中小企業には、社員を解雇しないよう、Payroll Protection Programを実施した。内容は、社員の給与2カ月分にあたる金額を借ることができ、社員を解雇しなければ、2カ月後にはローンを返す必要はなく、そのまま付与してもらえるというもの。当初の予算が急速になくなったが、新たな予算を組み込むなど対応が早かった。
- 今回のことで一気に失業者が増えた。New Jersey州では昨年の同時期で失業補償の申請が8万6,000人だったが、今年一気に88万人が申請した。このような事態に対応するのは難しかっただろうが、政府はとても協力してくれている。
2.How COVID-19 has disrupted the American food supply chains
COVID-19が招いた米国食品サプライチェーンの崩壊 5:20
- 日本のように店内に入ることすらできない外食産業は苦境に陥っている。テイクアウトサービスを実施しているレストランは少数ながらあるものの、それだけではビジネスが成り立たないため、ほとんどが閉店している。食料を提供するサプライチェーンが機能しなくなり、農業、畜産業では食物を破棄したり、家畜を処分して埋めなければならなくなっている。この問題はもっと深刻になっていくと思う。
3.Business trends in the U.S after the impact
これからの米国のビジネス動向 6:55
- この状況で生き残れる企業は、柔軟かくクリエイティブに事業をトランスフォーメーションできる企業。状況に合わせてスピーディーにサービスを変化させ、提供できる企業は強い。例えば、イベント企業などは、会員制など新しいビジネスモデルを検討している。会員内にてバーチャルなサポートグループなどを作り、ネットワーキングの付加価値を高めている。
- 絵画や工作などのアート教室では、使用する教材・材料を車で簡単にピックアップできるようにし、家に帰ってYouTubeやZoomなどのなどを使ってオンラインで学べるようなビジネスモデルにシフトしている。同様に、フィットネスクラブやジムもオンラインプログラムを提供している。
- コストカットする方法においてもクリエイティビティが発揮されている。例えば、“Furloughing”という、福利厚生は続くが、しばらくの間給料を支払わない仕組みでしのいでいる。または、従業員全員が給料カットを受け入れたり、パートタイムのスケジュールで働いたりなど、企業が生き残れるよう協力している。
- 働き方では、30年ぐらい前に流行した、2名で1名分の仕事をするジョブシェアを行う企業も出てきた。ビジネスを継続するだけではなく、人材確保につながる方法を模索している。
4.Effects on the marketing industry
米国マーケティング業界への影響 10:42
- 一緒に仕事をしているDigital Out of Home Mediaの協会では、業界を維持するために、さまざまなテーマのウェビナーを実施している。例えば、先週は交渉力に関するウェビナーを行った。これは今後、メディア契約の交渉などを行うことが増えるという予想に基づいている。
- GoogleやFacebookなどの大手プラットフォーマーは、企業のキャンペーンが止まっていることの影響を受けている。また、大手コーヒーチェーンでは、マーケティング予算をフランチャイズに配る予定のため、今年1年のマーケティングキャンペーンをストップしなければならないと聞いた。
- OTT(Over The Top) やオンラインに強い企業は、エンゲージメントが高まっているようだが、それ以外の企業はマーケティング予算がないため、OTTの取り組みを実施できていない。こうした状況から、マーケティングという職種そのものもダメージを受けおり、中には50%の給料カットと言われた人や、マーケティング以外の仕事も対応してほしいと言われた人もいる。
5.What are the positive aspects you see in this crisis?
この危機的状況の中に見るポジティブな側面とは 14:04
- 政府公認で仕事に戻れるようになった後、この状況で身に着けたことの何を維持するかを考えるのが重要。中でもソーシャルコネクションが大切である。
- 今回のことで、多くの人が、物事が早く進みすぎることや、人とつながるテクノロジーの大切さに改めて気づけた。個人的なことで言えば、毎日の犬の散歩で、以前は見かけなかったご近所さんを見かけることが増えた。このようなコミュニティ感は残ってほしいと思う。
- この機会を前向きにとらえ、学んだこと、自己成長できたことや、色々考えた時間を大切にし、次に活かすようにしてほしい。以前と同じことを行う企業には、顧客も戻らないし、優秀な人材も確保できない。
6.How should Japanese companies cope with the extended self-restraint period?
自粛が長期化する日本で企業が意識すべきこと 17:08
- まずは、自分のチームとつながっていることが大切だ。普段はミーティングしないチームであっても、テレカンなどを利用して、つながっていることが重要になる。
- 企業文化を共有しよう。アメリカでは、メンタルヘルスが深刻になり、うつ病などが増えると予想されている。さらに失業率が1%増加するごとに、自殺率もまた1%増えると言われている。そうならないためにも、チームメンバーをつなげることは重要である。
- テレカンなどテクノロジーによるコミュニケーションが、新しい発見につながると意識する。例えば、リアルなミーティングでは新しいアイディアを言うのが苦手だった人でも、発言しやすくなるかもしれない。また、チャット機能や統計機能などを使うことで、今までなら聞くことが難しかった意見を理解しやすくなるかもしれない。アメリカでは、“Mentimeter”というツールを用いて、オーディエンスの声を瞬時に聞くことができる。新しいツールを使わなくてもミーティングをスケジュールする時に、何を聞くのかなど事前に投げかけておいて、答えをチャットでもらうこともできる。とにかく、コミュニケーションを続けることが大切だ。
7.Key mindsets for “Managers” in the midst of COVID-19
COVID-19渦中で「経営者・管理職」が持つべきマインドセット 20:55
- なによりまずチームと話し合い、メンバーのストレスを減らしてあげることが大切だ。
- マネージャーだけではなく、全員へのアドバイスは、「ストレスをストレスと思わないようにする」こと。DistressをEustressに変え、ストレスをポジティブにチャレンジとしてとらえていくことが大切だ。今の危機をどうやって機会に変えるかと考えるようにしてほしい。
- COVID-19前の生活環境に戻ることはないだろう。だからこそこの変化チャレンジとして柔軟に考えられるように、チームと話し合い、どうやって皆で成長し、ビジネスの成長につなげられるかを検討する機会にしてほしい。
<おわりに>
個人としては、女性のさらなる活躍につながる活動を積極的に行っていきたい。例えばAdvance Woman at Workトラックなどをad:tech tokyoで実施できるのと楽しみにしている。それが、男性のリーダーが女性の活躍を推進したり、女性を組織でサポートすることについて学ぶ機会になるとうれしい。今回の在宅勤務に関しては、女性は通常の仕事に加え、学校に行けない子どもの世話や、外食できないことによる家事の負担も増えた。企業はこのような女性の立場をしっかり認識する必要がある。
*社名・役職は登壇時のものです