2020.06.24

【PR】CPAはあくまで指標の一つ。戦略の選択肢を広げることが脱却の第一歩

右上:原 央介(三井住友カード株式会社 マーケティング本部 マーケティング統括部グループマネージャー/エバンジェリスト)/左下:友澤 大輔(パーソルホールディングス株式会社グループデジタル変革推進本部 本部長)/右下:羽片 一人(株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 統括)/古市優子(Comexposium Japan株式会社 代表取締役社長)

サイバーエージェントと「ad:chan」との共催で2回実施するライブ配信「New Normal におけるパフォーマンス広告の在り方&次の一手」。1回目はパーソルホールディングスの友澤大輔氏、三井住友カード 原央介氏を迎え、サイバーエージェント 羽片一人氏がモデレーターを務めて「刈り取り型マーケティングからの脱却とCTVRを上げるブランディング」について、CPAばかり追うことの弊害や、マーケティング組織としてパフォーマンス広告をどう位置付けるかなどについて語ります。

コロナ禍によるデジタル化の推進は米国との差をどれくらい縮められるのか?

古市:コロナ禍の影響を踏まえ、サイバーエージェントさんとad:chanとでお届けする、2回のライブ配信 「New Normal におけるパフォーマンス広告の在り方&次の一手」。初回は、「刈り取り型マーケティングからの脱却とCTVRを上げるブランディング」をテーマにお届けします。では、ここから先の進行はモデレーターの羽片さん、お願いします。

羽片:いきなりですが、今日の結論というか、キーワードを共有しましょう。事前の打ち合わせでも盛り上がったのがこの「焼け野原と選択肢」です。これがどのような意味なのか、今日は3人で話していきたいと思っています。

まずコロナの影響で、どのようなことが起き、社内外でどのようなことを話しているのか、以前との違いなどについてお聞かせください。

友澤:我々は人材総合サービスですが、今回のことでリモート、テレワークなど、業界の働き方そのものが大きく変わりました。また景気の影響を受けやすい業界でもあるので、広告・マーケティング予算が縮小されるとともに、効果・効率についてよりシビアに見られるようになっています。

原:当社では、外出自粛によって出社が制限されたことで、コールセンターや会員の審査などオペレーション面に影響があり、お客さまにご迷惑をおかけしてしまうケースが生じました。それに伴ってプロモーションも止めざるを得ない状況にありました。また、カードの利用についても、経済全体の動きと連動しているため大きく影響を受けました。

羽片:我々も、広告主様が広告出稿を止めざるえないことがありましたが、少しずつ元に戻ってきている感覚も出てきました。広告を再開するにあたってよく聞かれるのが「消費者がどう変化したのか」について。家の中で過ごす時間が増え、オフライン行っていたことをオンラインで行うようになって、消費者の価値観がどう変化したのかについて聞かれることが増えました。

友澤:もう元の生活に戻ることはないというのは、New Normalでよく言われていますよね。私はBtoCよりBtoBの方が影響の度合いが大きいと思っています。ユーザーの消費行動の変化に合わせなければいけないという面ももちろんありますが、商談、コミュニケーションの在り方、意思決定などさまざまなところがデジタル化しています。

原:たしかに、変化というよりデジタル化の度合いが加速していると言えますよね。

友澤:そうですね。例えばアドテクノロジーの分野において、日本はアメリカに3年遅れていると言われています。これが今回のことでどこまで縮まるのか? まだまだ我々のような事業会社やその先のパートナー企業があまり変われていない印象があります。そこで大きく変化できるかが、この先議論する「刈り取り広告の脱却」とも関係すると思います。

広告が抑制される傾向にある中で、リターゲティングはリスクになる

羽片:では、本題に移っていきましょう。出稿を担当する人にとって、広告を活用して事業目標にどれだけ貢献できるのかが成果の指標だと思います。しかし今回、コロナの影響で広告を制限せざるを得ず、広告費が使えない形になりました。そうした中、チーム編成や、そこで議論されていたことについて聞かせてください。

原:先ほど話した通り、広告を一度完全に停止しました。まだまだ先行き不透明であり、また今後もこうしたことが断続的に起きる可能性も高い中、効率性ばかり追う広告を打ち続けるのは難しいという話になりました。むしろ、広告を打たなくても、自然発生的に当社を推奨してもらえたり、既存の会員の方が当社のカードを好んで使っていただけたりするような状況をつくり出すことにシフトしていかないと、現状のマス広告を打って、Web、デジタルでしっかり刈り取るマーケティングは長く続かない、そういう議論になりました。

友澤:原さんと同様、我々も広告予算全体のコントロールが始まっています。今回のことで、利益が下がるだけでなく、先が見えないだけに大胆な施策ができないというのが大きいですね。
メディア企業に聞いたところ、テレビの視聴率やウェブのPV、アプリのDAUなどは相当良いのですが、出稿する企業が少ないので、結果的に単価が下がっています。我々のような人材会社やほかの多くの会社も、ネガティブなところにバナー広告を出すのは、場合によって炎上につながる可能性もあるので避けたく、広告を抑えがちになっています。ただ、この状況はマーケターにとってはチャンスだと考えています。

また、このような状況でリターゲティング広告をしてしまうことのリスクを考えなければいけません。皆さん経験あるように、すでに購入したものの広告が別のサイトで出てくるようなことが頻発すると、インターネットにおける買い物体験や視聴体験が相対的に悪いものになってしまいます。人は悪い経験の方が記憶に残りやすいですから、そういうところに自分のブランドが相乗りするのはいやだ、という傾向がより強くなっていると思います。

羽片:私もメディアの責任者なので、社内から「この状況でユーザー数がとても増えているので、広告出稿するにはチャンスです」と聞くことも多いですね。実際にCPMも下がっているのですが、同時にそれは「ユーザー数は増えたけれど、広告出稿するお客様が増えていない」ことが要因と聞いています。
友澤さんの今のお話しは、「パンデミック下では、企業は広告のトーン&マナーを制限しなければいけない」ということですよね?

友澤:そうです、予算のコントロールとともに、広告の質も追い求められるようになっています。ただ、そのバランスがまだ分からないので、それなら今は広告量を減らしておこう、という企業が多いのが状況です。

CPAしか見ないことで生じる「市場を創造しない」という弊害

羽片:エージェンシーの立場から、お二人に聞きたいことがあります。今回、行っていた広告を止めましたよね。つまり、ペイド広告を止めたことで、お金を払ってトラフィックを得ることを止めたわけです。そうすると、その企業の純粋なトラフィックや、ユーザーから求められているものなど、企業としての地力が見えるのではないかと思います。広告のレポートを見る機会がなくなった代わりとして、そうした地力を測る基礎的なことを見る機会があったのか、またどのような数字を見ていたのか教えてください。

原:クレジットカードの申込者数などは当然見ています。あとはSNS、コンテンツのPVなどは見ていました。当社の場合、例年2月から4月に大規模な広告・プロモーションを行っているので、今回のコロナの影響はやはり大きく、目に見えて数字が下がり、厳しいというのが正直な感想ですね。

羽片:それは裏を返せば、やはり広告がある程度機能しているということでもありますよね。今回のセッションは、刈り取り型マーケティングからの脱却をテーマとしています。サイバーエージェントは比較的ダイレクトマーケティングが得意で、広告は投資である以上、事業成果を広告主様にお返ししなければならないと考えているだけに「CPA偏重、刈り取り重視」に矛盾を感じるときもあります。ここだけやっていれば、考えていれば大丈夫、というものではないなと。このことについて、事業会社側であるお二人が感じていることを聞かせてください。

友澤:ちょうどリーマンショック後の2008年くらいからが、日本でアドテクノロジーが盛り上がってくる時期でした。その時は、そもそもデジタルの手法自体があまり多くなく、実践している人も少なかった。そういうときは、分かりやすい指標でコントローするので良かった。しかし現在はデジタルが当たり前で、やらない会社がない状況です。そうすると、ほかの会社と全く同じ指標で戦ってもおそらく勝てません。例えば、PayPayさんのように、多額の予算を使って広告を投下するようなプレイヤーが登場すると、ゲームのルール自体が変わってしまいます。手法も単純かつ限定的ではありますが、市場そのものが拡大しているわけではないところでは、ある程度早い者勝ちになりがちです。だからこそ、今回のテーマにある「刈り取る」という言葉になってしまうのです。

刈り取るだけで、だれもその後に見込み客になるような種をまいて育てることをしていないから、まさしく焼け野原になってしまう。我々は無意識にこの一連の行動をやりがちです。そしてそれを助長しているのがCPAです。私自身、かつては「CPAお化け」で、Per Costを毎分・毎秒単位で見ていました。それを経験したからこそ言えるのは、CPA自体は悪くないけれど、それしか見ないというのは、もはやマーケティングではなく販売促進です。だから、行き過ぎてしまえば、マーケット自体を壊してしまうし、自分たちのサービスも壊しかねません。

原:ちょうど昨日(6月23日)、日経の記事に「キャッシュレス決済の比率が2018年の24.1%から、26.8%になった」という記事がありました。各社が大々的なキャンペーンを行っているのに、まだこの程度にとどまっているというのは、効率性や利得性といった短期的な打ち手だと、友澤さんがおっしゃるように市場全体が伸びないし、市場からの理解も得られにくいのだと感じました。

友澤:同様のことは以前から言われています。セールスやキャンペーンの時だけ動くチェリーピッカーは昔からいて、一見そうした人たちが市場を回しているように思えるのですが、金額的なインパクトは限定的です。ただ、その人たちがこの先いろいろな人に影響を与えるから先行投資をしている面もありますし、かつその人たちのパイが小さいからこそ、Per Costを重視しているとも言えます。

CPA偏重だと訴求内容が類似しがちで、予算の大きな企業だけしか勝てない

羽片:友澤さんが「CPAお化け」から脱却するきっかけ、このままではうまくいかないと思った事象などがあれば教えてください。

友澤:ヤフーに移ったくらいの時、「効率も量も、両方がんばれ」と言われた時が、自分が変わったタイミングですね。周囲のリテラシーが上がったからそうした言葉が出てきたのでしょうし、私自身、ビジネスに対するインパクトをより冷静に問われたときに、CPAだけでコントロールすることはうまくいかないのだと気づきました。

私だけでなく、業界として販促からマーケティングに考え方をシフトしなければいけないという流れになったのが、5~6年前くらいでしょうか。効率だけでマネジメントするのは難しく、トップラインを目指さなければならない。効率の指標は縮小均衡に向かいがちなので、リーチ、PVなど分母を増やさなければいけないという考え方になりました。

羽片:CPA重視でマーケティングをすると、予算が大きい企業が出稿シェアを一気に取ってしまいます。また、運用していく中で広告の訴求内容が業界によって固定されがちです。似たような内容のバナーが出回ってしまい、ユーザーとして見ると、訴求軸の情報しか入ってこないと感じています。企業が本当に伝えたいことと、広告効果が出しやすい内容とでギャップが生じてしまっていると感じてしまうことがあります。原さんは、そういう経験ありませんか?

原:我々の業界は「クレジットカード=お得でなければ」「サービス自体は各社そこまで変わらないのでは?」という生活者のイメージ、ポジションがある程度ついてしまっています。そうなると、第一想起を取れるか(社名が一番に挙がるか)が施策の軸にならざるを得ません。そういう意味だと、楽天さんなんかは、グループ全体でうまく訴求なさっていると感じています。

当社でも、直近で新たなプロダクトを出したのですが、最終的にユーザーの背中を押すのは、利得性のメッセージにある程度頼らざるを得ません。本質的には、当社のプロダクトだけで判断していただきたいのですが、それだけの活動だと獲得数量が厳しくなる。そこで、CPAを見ながらマス広告をしながら、、、 というちょっともやもやした形で施策を行ってしまうこともあります。

組織全体でCPAを追うのではなく、リーチなど複数のKPIをマネジメントすることが大事

羽片:お二方の会社はどのようなプロセスで訴求軸を決めていくのでしょうか? プロダクトメリットと、ユーザーメリットがあったとき、CPA上で効果が良いのは、ユーザーメリットだと思います。例えば、ダイレクトの担当者であればCPA目標を目指し、ユーザーメリットの訴求で良いと思うのですが、ブランド責任者であれば、企業ブランドはもちろん会社としてもプロダクトの強みを訴求したいこともあると思います。そのあたり体制上のことも含めてお聞かせください。

友澤:ダイレクトとブランドが分かれている会社の方が多いですよね。その方が組織や役割のKPIも設定しやすいですし、マネジメント上もやりやすいですから。でも、単にCPAだけを見ていては、圧倒的にリーチが不足してしまいます。だからといって、広告予算が潤沢にある会社などほとんどありませんから、結果的にマス広告とデジタル広告の予算をどう組み合わせますか、という議論になりがちなのです。また、短期的に結果がわかるデジタル広告と、中長期的に効果を考えなければいけないマス広告とでは、KPI・KGIが変わりがちなので、組織を別にしている企業が多いのだと思います。

また、先ほどの「私がどこで変わったのか」の続きで言えば、ヤフー在籍時にヤフーの自社広告をたくさん回したことで、テレビとブラパネをミックスしたらどれだけすごい結果になるのかなどその効果を、身をもって知りました。やはり両方知ることで見える世界は変わりますね。

羽片:原さんはいかがでしょうか?

原:2018年の11月、タレントの小栗旬さんを起用し「Have a good Cashless.」というキーメッセージを掲げたとき、それまで分かれていた広告・宣伝、マーケティング、営業を統合しました。いまでは、何かプロモーションをするときは常に全体で会話をしています。先ほどお話ししたように、プロダクトを出すときは、我々が伝えたいプロダクトの魅力の部分と利得性ができる限り共存する形でコミュニケーションするよう心がけています。しかし、実際の刈り取りにおいては、ディスプレイからリターゲティング、アフィリエイトになると、より利得性重視になってしまっています。現時点では、数を追うこととブランド訴求の両立が難しいので、この課題の解決に向けて動かなければいけません。

友澤:アッパーファネルをどうやって育てて第一想起を作るのかも大事ですよね。また、ファネルの下に行くほど「CPAやアクションが大事!」と言っているわりに、アドベリをしっかり行っていなかったり、フラウドがあるところに広告を掲出していたりします。CPAでよく言われるのは、「CPA自体が悪いのではなく、いろいろな要素をはらんでいるにもかかわらず、それらについてあまり考えていないことが問題」ということ。

従って、アドベリもフラウド対策もやっていて、CPAだけでなくリーチも見ている。複数のKPIを例えばCMOが全体をどうマネジメントするか? という状態であれば問題ありません。または、原さんがおっしゃったように組織が一体化していて、チーム自体のKPIは異なるけれど、CMOが追っているゴールは決まっている。その中で、だれかが担当としてCPAを見ているというケースも同様です。一方で、なぜか組織全体としてCPAを追っていたり、広告会社にCPAしか話していないという状態はおかしいですよね。

原:アドベリとアドフラウドのところは、認識しつつもなかなか手が回っていないのが実情なので、ちょっと胸が痛いですね(笑)。

友澤:そこを行えば無駄がなくなるわけですから、結果的に広告の効率が上がりますよね。とはいえ、アドベリやアドフラウドに取り組んだり、打ち手の選択肢を広げたりKPIの可能性を広げたり、というのはこれからでしょうね。デジタルの分野はだんだんそうしたフェーズに入ってきていて「とにかく新しい手法をやっておけばいい」だとか「クリエイティブを最適化すればいい」というのはもう終わった話です。どのテクノロジーを選択するかではなく、どういうKPIを立ててどのユーザーに対してどうマネージするか、これが本当に問われています。今回のコロナ禍で予算が縮小されているときなどは、ムダができませんから、よりマーケターの力が求められると思います。

羽片:このタイミングで、よりCPAに寄ってしまってはいけないということですね。

今後はCPAとブランド価値、それぞれを見る人の良の融合が求められる

羽片:CPA自体は、とても素晴らしい指標だと思います。これがあることで、投資対効果が可視化され、インターネット広告そのものが大きく伸びる要因になりました。一方で、数字さえよければ後はどうでもよい、という思考停止ワードになりつつあるという面も持っていると思います。

お二人の話をまとめると、「CMOやマーケティングのチームが全体を描いたうえで、コミュニケーションを作り、CPAをその中の一つとして見る分にはかまわない」「予算が限られていてもCPAに寄らない」ということかと思います。

そのうえで、これからどういったことをやっていけば、刈り取り依存ではなく、マーケティングの本質的な目的を果たせるのでしょうか?

原:テレビや、Web動画などの施策をやろうとなったときに、効果の可視化が重要だと思っています。当社はオンラインとオフラインの出稿金額、インプレッションなど、コンバージョンを会員の獲得と置いた時にどの施策が成果につながっているかを見ています(図参照)。縦の棒グラフが獲得に貢献した起点貢献数、例えば単純にテレビCMをしたらどれくらい獲得できたのか、と考えてもらえればいいです。費用を貢献数で割ったのが赤線の貢献値単価です。

今後はCPAとブランド価値、それぞれを見る人の良の融合が求められる

見ていただくと分かる通り、すでにディスプレイ、リターゲティング広告、キーワードなどは単価が上がってきていたり、獲得数自体が限定的になってきていたりします。

カードの場合、商品特性上、すぐに申し込むというよりは、比較検討してからとなりますので、獲得コストは高くなりがちなのですが、結局リスティングの社名とアフィリエイトに予算を割いておけばある程度取れるという特性もあります。その場合、CPAだけを追うと競争が激化してしまい、アッパーファネル向けの施策が必要となります。もちろん施策の効果を明らかにしなければいけません。現在のところ、テレビCMやウェブ動画は獲得数においては効果が出ていると言えます。

友澤:視聴者からの質問でもあり、私も聞きたいことなのですが、テレビCMの貢献値単価ってどうやって出しているのでしょうか?

原:このモデルで、日次ベースで出稿の金額を入れたものと獲得とを重回帰分析を行い、相関関係を見ることで、どの施策が獲得に一番効果的だったのかを割り出しています。

友澤:テレビCMを打っている時間と、流入してくる時間はどこまで合わせているんですか?

原:日次ベースでしか合わせていません。理由は、クレジットカードは検討商材なので、広告を打ったからといってすぐに獲得に結び付くわけではないからです。

友澤:なるほど。ディスプレイバナー、動画、リスティングは、流入からコンバージョンに至るまでの時間は短い、または短く計算できてしまいます。一方でテレビCMはそこまでが長かったりしますよね。そのあたりのメディアごとのチューニングは行っているのでしょうか?

原:メディアによって、チューニングをしています。さらにクレジットカードの場合、申し込もうとしたとき、手続きする時間の余裕ができるまで待つこともありますから、さらに空いたりすることもあります。

羽片:この図を見ると、右側のオーガニック検索や読み物コンテンツの起点貢献数が高いですね。ユーザー側からすると、これが求めている情報なのだと思いますね。

原:そうですね。コンテンツマーケティングをもう4~5年行っているので、この数値が高いのは嬉しいです。コンバージョンに至るまでには、ここを起点としながら、その後リスティングやアフィリエイトを通っています。ただ、パイを広げるアッパーファネルの施策としては効果が出ていると言えます。

友澤:おそらく今後は、CPAを見ている人たちの良さとブランドの価値を見ている人の良さが融合していかなくてはいけないのだと思います。では、CPAを注視している人の良さは何かというと、結果を計算式や数字で表せることです。アナログな部分を精緻に数値化できるかについてはまだ調整の余地がありますが、全体を数値化して説明することで、ブランドサイトの人たちと協力でき、単なる「刈り取り」からの脱却を図れると思います。また、どうやってストック型の施策を作っていくかも大事です。メディアを買ってアクションを刈り取るというのはフロー型なので、こういうときだからこそ、今後、価値ある施策として残せることは何かにチャレンジすべきだと思います。

羽片:フローからストックにというのは共感します。我々も、広告活動に頼らないインターネットの活用の仕方に組織を新設し注力し始めました。例えば、YouTubeやInstagramのアカウントフォロワーというのは、企業にとって大きな資産だと思います。従って、そこをどう増やすかを一緒に考えるケースが増えました。そうして資産を貯めながらも、キャンペーンなどで広告を行って記憶に残るかどうかへ投資をしていく。それが、もう一つのキーワードでもある「選択肢を増やす」ことでもあると思います。

友澤:こういう予算が限られる時期だからこそ、既存の何かをやめて新しいことにチャレンジできます。その時、選択肢や戦略のオプションがたくさんあれば、あらゆる打ち手に対応できるわけです。一方で、CPAの指標しか持っていない、運用型広告しか行っていないでは、こういう時に大きく影響を受けてしまいます。身軽さを得るためにも、いろんな選択肢を増やしておくべきですね。

古市:本日はありがとうございました。

*社名・役職は登壇時のものです

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