広告業界はAI研究者の就職先になれるか
サイバーエージェント 内藤 貴仁 氏

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2018-07-18 BY うえの みづき

ad:tech tokyo2018のアドバイザリーボードメンバーは総勢35名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんからのデジタル広告、マーケティング業界への問題提起を事務局が連載形式でインタビューします(特集一覧はこちら)。

今回は株式会社サイバーエージェントアドテク本部&上級執行役員内藤貴仁氏が登場します。広告の分野でも画像解析や自然言語処理などAIに関するキーワードをよく耳にするようになった一方、業界で技術者や研究者はまだごく少数。その現状をお伺いしました。

—アドテクノロジー商品の開発・提供を行う部署を統括していらっしゃるなかで、広告会社や広告主企業からの要望を日々受け取っていらっしゃると思います。ここ最近の要望の内容の特徴などはありますか。

以前はCPIやCPAといった「web上でいくら購入されたか」の指標に向けての広告最適化が大きなテーマでしたが、ブランドリフトやリアル店舗への送客数を上げたいという要望が増えました。要望が増える前から先回りして開発してきた「ネットでの売れる・売れない」から脱却するための広告商品が売れるようになってきたという印象です。マーケティング予算がデジタルへ移行してきたので、広告主が増え、お金が使われる範囲が広がってきたのかもしれません。

—変化する要望の先回りするとなると開発チームの体制作りもなかなか大きなテーマになりそうですね。

今、自分の仕事としてはエンジニアとクリエイティブ、さらにはCGやAI関係の開発部分も束ねるようになってきました。広告の配信の精度が上がってきて、ユーザーの個別認識ができるようになってきても届けられる広告のクリエイティブが一緒だと意味がないですよね。ターゲティングができるようになればなるほどクリエイティブの重要度が上がるので、そこにまで手を出さざるを得ない状況と言いますか、領域の境目がなくなってきています。

—AIにまつわる技術は業界としてかなり注目を集めていますが、サイバーエージェントの皆さんのように広告会社、メディア会社としての事業を持つ企業の場合でも技術者というは増えてきているのでしょうか。

まず現在、広告事業専任の技術者及び研究者が約350名います。
ただ、これは広告業界全体としてですが、なかなか課題があります。広告会社が就職先としてエンジニア、技術者に認知されていないんですよ。AIだと自然言語処理とか画像解析とか色々な技術分野があります。その研究者たちにしてみたら、AIの勉強をした人が行くところではないというイメージなので、土壌をいちから作らなければいけないですね。海外のテクノロジー企業も含めた人材市場の報酬合戦には日本企業は20年分くらい遅れをとってしまっているし、1人優秀な人が入ってきたとしても仲間がいなければ居づらいとか、職場環境の整備もやっていかなければいけない。googleやAmazonといったエンジニアリングに投資をするテクノロジー企業が全く新しい発想で広告モデルを作っていっているので、そこと戦えるようにしたいですね。4年ほど前からチームに徐々にAIの研究者が加わってきてくれて、ようやく私たちも体制ができてきたかなという段階です。

—そのチームの皆さんで取り組んでみたい個人的な展望などは。

消費財ブランドが商品を実店舗に並べてもらうためのいわゆる「棚どり」を目的としたTV戦略ってありますよね。デジタルも「〇〇地域の店舗に△人の送客をします」という技術はできているんです。1週間で100万人、なんていう数値もやろうと思えばできる、でも短期勝負での規模をみた時にデジタルとTVはどっちの方が優れているんだっけ?と言われるとまだ負けてしまう。結局まだ精密なターゲティングや計測といった技術が、規模の経済に勝てないので、規模を広げて行くための開発を推し進めていきたいです。また、研究者的な視座も含めた開発側の展望もどんどん取り入れて、例えば来店型成果報酬広告のようなプロダクトをつくっていきたいと思ってます。

—ad:tech tokyoの場でも今年はAI関係の話題が増えそうです。

研究開発レベルの話はもっと知りたいです。海外の学会などでは企業の研究チームの参加も多いですよ。私たちも海外の学会に研究が採択されるようになってきましたが、アドテックの”テック”部分はもっと語られてもいいなあと。事例の紹介もいいのですが、今日の戦いだけを共有している間に広告業界がテクノロジー業界に置いていかれちゃうので。

(聞き手:事務局 堀)


<プロフィール>
内藤 貴仁
株式会社サイバーエージェント
アドテク本部 & 上級執行役員
1977年生まれ。2001年株式会社サイバーエージェント入社。
2010年に広告事業の統括本部長を経て、同年、取締役就任。
現在はアドテクノロジー商品の開発・提供を担うアドテク事業と
オペレーション事業を統括。2016年に上級執行役員に就任。

ad:tech tokyo 2018の詳細はこちらから

イベント概要
開催時期: 2018年10月4日(木)、5日(金)
開催場所: 東京国際フォーラム  東京都千代田区丸の内3丁目5−1
公式サイト:http://www.adtech-tokyo.com/ja/

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